この記事では、映画の疑問点や気になる要素を整理・検証しています。
作品の内容に触れていますので、未視聴の方はご注意ください。
『ヘイトフル・エイト』
2015年/監督:クエンティン・タランティーノ
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ヘイトフル・エイトのあらすじを整理
ジョン・ルースはなぜ「首吊り人」なのか?
『ヘイトフル・エイト』に登場する賞金稼ぎジョン・ルースは、生死を問わない賞金首であっても、必ず生け捕りで連行するため、作中では「首吊り人」と呼ばれています。
今回は、ルースがなぜそこまで生け捕りにこだわるのかを、作中の描写から整理したいと思います。
賞金首は基本的に殺して連行する
作中冒頭では、マーキス・ウォーレンが3体の賞金首の死体を馬車に積んで登場します。
また、絞首刑執行人を名乗るオズワルド・モブレーですら、ルースに対して「殺して連行する方が楽では?」という趣旨のことを尋ねています。
こうした描写から見ると、この世界では賞金首を殺して連行し、懸賞金を受け取るやり方が一般的だと考えられます。
それに対してルースは、「楽な仕事なんてない」「絞首刑執行人の仕事を奪いたくない」と語ります。
殺して連行した場合のリスク
殺して連行する方が楽だ、という理屈自体はわかりやすいです。
相手を生かしておいた場合、逃亡される可能性もあれば、反撃される危険もあります。
そのため、生け捕りはどうしても手間も危険も増えます。
では、それでもなおルースが生け捕りを選ぶのはなぜなのでしょうか。
作中では明言されませんが、いくつか推測できることがあります。
1つは、人違いのリスクです。
この作品では賞金首の殺害や正当防衛の文脈はある程度認められている一方で、無実の人間を殺せば当然ただの殺人になります。
生け捕りであれば、少なくともその場で取り返しのつかない誤認殺害を避けやすくなります。
ちなみに、作中で手配書を扱う場面を見ると、手配書は文章中心の形式になっているように見えます。
簡単なイラストのようなものは確認できますが、それを本人と細かく見比べるような描写はありません。
そのため、本人確認はかなり簡易的に行われていた可能性があります。
もう1つは、死体では本人確認が難しくなる可能性です。
作中では、マーキスがボブの顔面を吹き飛ばしたあと、顔がないから懸賞金にならないという趣旨のやり取りが出てきます。
この場面を見る限り、死体の損壊が激しい場合、賞金首として認定されず、懸賞金の支払いが無効になる可能性があるようです。
こうした点を踏まえると、殺して連行する選択は100%合理的ではないと考えられます。
ジョン・ルースは意外と規則を守るタイプである
作中でのルースは、連行中のデイジー・ドメルグに容赦なく暴力を振るい、怪しい相手にはすぐ銃を向ける人物です。
見た目にはかなり粗暴で、野蛮な賞金稼ぎにも見えます。
ただ、その一方で、雪の中で凍えかけているクリス・マニックスを見捨てれば、結果的に殺したのと同じことになると指摘され、渋々ながら駅馬車に乗せています。
また、老人を階段から蹴り落とすのは事故で済むかもしれないが、撃つのはまずい、とマーキスを制する場面もあります。
こうした描写を見ると、ルースは「乱暴ではあるが、規則の範囲内に留まる人物」として描かれているようにも見えます。
リスク回避の末の「首吊り人」
以上を踏まえると、ジョン・ルースが生け捕りにこだわる理由は、単なる美学だけではないのかもしれません。
もちろん本人は「絞首刑執行人の仕事を奪いたくない」と語りますが、それだけでなく、
誤認殺害や死体損壊などのリスク回避といった、現実的な理由もあった可能性があります。
つまりルースは、粗暴に見えて意外と真面目で、保守的にリスクを管理する賞金稼ぎだったのではないでしょうか。
その結果として生まれた異名が、「首吊り人」だったのだと思われます。