この記事では、映画を鑑賞した方に向けて、作中の疑問点や気になる要素を整理・検証しています。
作品の内容に触れていますので、未視聴の方は先に本編をご覧ください。
あらすじを振り返りたい方はこちら。
ヘイトフル・エイトのあらすじ整理
ヘイトフル・エイト(2015年/監督:クエンティン・タランティーノ)では、ジョー・ゲージが毒を入れたコーヒーによって、ジョン・ルースと御者のO.B.が死亡し、ロッジの空気感が一変してしまいますが、実はこの件でもう一人の被害者がいるように思えます。
それがセニョール・ボブです。
外部サイトではコーヒーの毒とは無関係に「ボブの淹れるコーヒーはかなり不味い」と記載される場合があります。
そこで今回は、ボブは本当にコーヒーを淹れていたのか、を作中の描写をもとに整理していきます。
ボブがコーヒーを淹れる描写はない
まず確認しておきたいのは、作中ではボブがコーヒーを淹れる場面は描かれていないという点です。
ジョン・ルースはコーヒーを吹き出した直後、「メキシコ野郎が靴下でも入れたか?」という趣旨の文句を言います。
このセリフから「ボブが淹れたコーヒー」という印象が広がった可能性がありますが、
作中では実際にボブが淹れたとは説明されていません。
そもそも淹れなおす余裕があったのか?
本作の第5章では、ジョディ・ドミングレ一味はミニーたちを殺害しロッジを制圧したあと、約4時間で
- 死体処理
- ロッジの清掃
- 待ち伏せの準備
を行っています。清掃後のロッジは、床にジェリービーンズや割れた瓶の破片が少し残っており、完全に片付いているとは言い難い状態です。
何とか体裁だけ整えた、といった様子でした。ここで気になるのが、いつジョン・ルースたちが到着するか分からない状況で、のんびりコーヒーを淹れる余裕があったのかという点です。
もしポットが放置されていたのであれば、その中身はミニーが淹れたコーヒーのままだった可能性もあります。
最初から不味かった可能性は?
作中では、御者のジュディとエドがミニーのコーヒーを「世界一」と絶賛しています。
ミニー本人は「御者には好評だけど、乗客には濃すぎるみたい」とやや謙遜ぎみですが、コーヒーには自信がある様子です。そしてジュディに急かされながらコーヒーを淹れます。
ジョディは、そのコーヒーを一口飲んだところで、ミニーに味の感想を聞かれますが、無言で発砲します。
その後はコーヒーを飲みながらサンディ・スミザーズと会話を始めますが、コーヒーの味に関しての発言はありません。この場面では
- 御者には人気
- 賛否あり
- ジョディは飲んだ直後に発砲、味の感想はない。
という状況になっており、作中では御者と乗客で意見が分かれているようです。
ロッジまでの道中、乗客は駅馬車の中にいますが、御者は極寒の世界で馬を操っています。
もちろん車外です。そして頻繫に大声を出して馬たちに指示を飛ばしています。おそらく数時間ぶっ続けです。
正直その労働環境を考えると「何を飲んでも美味しいのでは?」という疑問も浮かんできますが、少なくとも、最初から飲めないレベルで不味いという可能性は低そうです。
コーヒーは放置すると不味くなるのか
美味しいコーヒーも、ストーブの上で4時間以上放置された場合どうなるのでしょうか。
1860年代のアメリカでは、コーヒーは現在よりかなり雑な方法で淹れられていました。南北戦争期の兵士や西部の野営では、
- 挽いた豆を直接鍋に入れる
- 熱湯で煮出す
といった方法が一般的で、後年のペーパーフィルター式のようなきれいな抽出ではありませんでした。
そのため、ストーブの上に長時間置かれると
- 抽出が進みすぎる
- 苦味や渋みが強くなる
- 香りが劣化する
といった状態になりやすく、味が大きく落ちていた可能性は十分考えられます。
ルースは本当に不味くて吹き出したのか
もう一つの可能性として、ジョン・ルースが味ではなく警戒心から吹き出したという見方もできます。
ルースは登場時からデイジー・ドメルグの仲間の存在を警戒しています。
そのため「こんな状況でコーヒーに毒が入っていたら危ない」と考え、咄嗟に吹き出した可能性も考えられます。
ただしその後、オズワルド・モブレーが「不味いけど遠慮して黙っていた」という趣旨の発言をしているため、ロッジのコーヒーが実際に不味かった可能性は高そうです。
ポットの残量を観察してみる
もう一つ気になるのが、ロッジに置かれている コーヒーポットの残量です。
ロッジに到着したジョン・ルースは、ストーブの上に置かれていたポットを持ち上げます。
このときポットの中で液体が動く音がしますが、音の感じからすると 残量はあまり多くはなさそうです。
さらにルースはコーヒーを口に含んで吹き出したあと、ポットの中身を床にぶちまけます。
しかしその量も、ポットいっぱいというより明らかに少量に見えます。
もしボブが新しくコーヒーを淹れていたのであれば、ポットはもう少し満たされていても良さそうです。この点を考えると、
- ミニーが淹れたコーヒーが残っていた
- それが長時間ストーブの上に置かれていた
という 「ミニーのコーヒー放置説」の方が状況としては自然に思えます。
もちろん作中で明言されているわけではありませんが、ポットの残量を見る限り 新しく淹れ直された形跡はあまり感じられません。
まとめ
以上を整理すると、次のようになります。
- ボブがコーヒーを淹れる描写はない
- ミニーが淹れたコーヒーが放置されて味が落ちた可能性がある
- そもそも最初から特別美味しいコーヒーではなかった可能性もある
そのため、「ボブのコーヒーが不味い」という評価は、少し濡れ衣かもしれません。