この記事では、映画の疑問点や気になる要素を整理・検証しています。
作品の内容に触れていますので、未視聴の方はご注意ください。
『ヘイトフル・エイト』
2015年/監督:クエンティン・タランティーノ
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ヘイトフル・エイトのあらすじを整理
リンカーンの手紙とは?
『ヘイトフル・エイト』では、マーキス・ウォーレンがリンカーンの手紙を所持しています。
ストーリーに直接関わるものではありませんが、作中では印象的に扱われており、人物同士の関係にも影響を与える重要な要素となっています。
作中でのリンカーンの手紙
本作の第1章では、マーキスとジョン・ルースが約8か月前に一度会っていたことが語られます。
その際、マーキスはかつてリンカーンと文通していたと話し、ルースに手紙を見せていました。
その時の印象が強く残っていたらしく、ルースは駅馬車の中で、マーキスにもう一度手紙を見せてほしいと頼みます。
マーキスは、何度も他人に見せたくはないと言いつつも、駅馬車に乗せてもらった礼として、懐にしまっていた手紙を見せます。
再び手紙を読んだルースは感動し、手錠で繋いで連行しているデイジー・ドメルグに、価値のある手紙だと伝えます。
しかし、その直後にデイジーは手紙にツバを吐きかけます。
これに怒ったマーキスは咄嗟にデイジーを殴りつけ、デイジーは繋がれたルースと共に駅馬車の外へ放り出されます。
第3章でミニーの紳士服飾店に到着した後は、ルースから手紙の存在を聞いたオズワルド・モブレーが興味を示します。
ただし、持ち主が黒人のマーキスだと知った途端に興味を失ったのか、それ以降は手紙について触れなくなります。
続いて手紙の存在を知ったクリス・マニックスは、黒人がリンカーンと文通しているはずがないと言い放ちます。
これに対してマーキスは、手紙が偽物であることを認めます。
この告白を聞いたルースは気分を害しますが、マーキスは、黒人が白人の警戒を解くにはこうした手紙が有効だと語ります。
本作のラストでは、デイジーを絞首刑にした後、マニックスがマーキスに手紙を読ませろと言い、手紙を音読します。
そして「うまい創作だ」と評したあと、手紙を丸めて捨てます。
手紙は本物かもしれない
作中でマーキスは手紙を偽物だと認めていますが、そもそもマニックス相手に本物だと証明する必要はありません。
信じる人だけが信じてくれればよい、と考えていたのであれば、実は本物だった可能性があります。
また、デイジーにツバを吐きかけられた瞬間に咄嗟に手を出していることから、マーキスにとって本当に大切な手紙だったという見方もできます。
やはり偽物かもしれない
一方で、やはり偽物の可能性も高いです。
マーキス自身がはっきり偽物だと認めている通り、一定数の白人の懐に入る一つの手段に過ぎないのかもしれません。
ただし作中では本物だと信じていたのはルースだけであり、成功率は低そうです。
また、デイジーにツバを吐きかけられた際の反応も、手紙そのものが本物だったからというより、
自分の持ち物を汚されたことへの反射的な怒りだったとも、真実味を増すための演技だったとも考えられます。
さらに、ラストでマーキスが手紙を渡す場面では、懐に大切にしまっていたはずの手紙を、ズボンの尻ポケットから取り出すように見えます。
これは、デイジーに手紙を汚されたため雑にしまっていた、あらかじめ複数枚用意していた、などの可能性も考えられます。
作中からわかること
リンカーンの手紙の真相は、作中では明言されません。
ただ、ひとつ言えるのは、本物だと信じていたルースも、偽物だと断じていたマニックスも、どちらもその内容自体は良い手紙だと評価しているということです。
日本人には少し感覚がつかみにくいところもありますが、メアリー・トッドの名前が出てくるくだりなどは、アメリカ人にとって印象的に受け取られる部分なのかもしれません。