※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
バイス
(Vice)
作品データ
2018年|アメリカ|伝記・ブラックコメディ
監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベール, エイミー・アダムス, スティーブ・カレル, サム・ロックウェル, ジェシー・プレモンス ほか
地味な男が「副大統領」の皮をかぶって国家のハンドルを握る話
ヤバいカリスマでも、天才演説家でもない。
むしろ無愛想で、目立たず、表情も薄い。なのに、気づいたらアメリカの進路を決める場所にいる。
この映画は、ディック・チェイニーが権力の中心に入り込み、いつの間にか周りが彼の都合で動くようになっていく流れを、皮肉とギャグ混じりで見せてくるやつ。
ざっくり時系列
・1963年、チェイニーが荒れ気味で飲酒運転逮捕、リンに詰められる
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・1969年、政界に入り、ラムズフェルドの下で政治の技を覚える
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・「権力ってこうやって動くのか」を肌で理解していく
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・フォード政権でホワイトハウス中枢へ
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・下院議員へ転身、保守・企業寄りの政策を後押し
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・湾岸戦争期に国防長官として存在感
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・民間でハリバートンCEOへ
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・2000年、ジョージ・W・ブッシュの副大統領候補に
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・9.11後、外交・防衛の意思決定を握っていく
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・終盤、家族の亀裂や世論の反発を抱えつつ「後悔なし」で幕
物語の主要人物
・ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)
表に立つより、裏で仕組みを握る側。副大統領の枠を広げていく。
・リン・チェイニー(エイミー・アダムス)
家庭のブレーキ役かと思いきや、むしろ加速装置。
・ドナルド・ラムズフェルド(スティーブ・カレル)
チェイニーに政治の荒技と生存術を叩き込む上司。
・ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)
トップの座にいるけど、実務の重心が別の場所に移っていく。
・カート(ジェシー・プレモンス)
語り部ポジション。映画のトーンを妙に変な方向へ引っ張ってくる。
成り上がりの始まりは「やらかし」と「奥さんの圧」
最初のチェイニー、わりとどうしようもない。
仕事もフラフラしてて、飲酒運転で捕まって、リンに「このままなら終わりね」ってガツンと言われる。
ここでスイッチが入って、政治の世界に足を突っ込むのが面白いところ。本人の野心というより、環境と流れに乗って“有能な実務屋”になっていく感じ。
権力は「目立つ人」じゃなく「仕組みを知ってる人」に集まる
ホワイトハウスでチェイニーが見ていくのは、演説とか理想じゃなくて、決定が下りるルートそのもの。
誰が情報を握るか、誰が文章を書き、誰が承認の形を作るか。
この映画、そこをコメディっぽく説明するから笑えるのに、笑ったあとにちょっと冷える。
副大統領が前に出ないほど、裏の支配力が増える
ブッシュ政権でのチェイニーは、前で人気を取る役じゃない。
だけどラムズフェルドや側近たちと組んで、外交・防衛の決定にガッツリ噛んでいく。
「副大統領ってここまでできるんだ」っていう、権限の拡張ゲームを見せられてる感じになる。
それでも家族ドラマがずっと刺さってくる
国家の話をしてるのに、リンとの関係、娘たちの出来事、家族内の断絶がずっと影として残る。
とくに終盤、政治の勝ち負けと家庭の感情が同じテーブルに並んで、どっちも綺麗に片付かないのが嫌にリアル。
この映画のポイント
・政治の出来事を「仕組み」と「ノリ」で分解して見せる
・チェイニーを怪物にも英雄にも寄せない、変な距離感
・説明っぽいのに勢いで見せ切る編集と語り
・笑える場面があるのに、後味は軽くない
・最後に本人が観客へ言い放つ形で、価値観をぶつけてくる
たぶんこんな映画
歴史の授業ってより、「権力ってこうやって増えるんだ…」って胃の奥がむずむずするタイプ。
テンポは早いし笑える瞬間もあるけど、観終わると妙に現実のニュースが違って見えてくる。
政治をよく知らなくても、空気の変わり方とか、仕組みの怖さはちゃんと伝わってくるやつ。

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