※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
セブン・イヤーズ・イン・チベット
(Seven Years in Tibet)
作品データ
1997年|アメリカ|ドラマ/伝記
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ブラッド・ピット、デヴィッド・シューリス、B・D・ウォン ほか
冒険譚のようで、内面の話
この映画、
タイトルだけ見ると
壮大な冒険映画っぽい。
ヒマラヤ、雪山、秘境、チベット。
でも実際に描かれているのは、
世界を制覇したい男が、少しずつ小さくなっていく話。
主人公はハインリヒ・ハラー。
実在の登山家で、
才能も自信も、野心もある。
でも、人としてはかなり扱いづらい。
最初のハラーは、正直あまり好きになれない
ハラーは傲慢で、
勝利と記録しか見ていない。
妻や生まれてくる子どもよりも、
登山の成功が優先。
この映画、
あえて序盤で
主人公を好人物として描かない。
だからこそ、
後半の変化が際立つ。
捕虜、逃亡、流れ着いた先がチベット
第二次世界大戦中、
ハラーはイギリス軍の捕虜になる。
脱走を繰り返し、
命がけで逃げ続けた末、
たどり着いたのがチベット。
そこは、
彼が知っている「文明」とは
まったく違う価値観の世界。
競争のない世界との衝突
チベットの人々は、
効率や勝敗にこだわらない。
急がない。
争わない。
命を奪うことを避ける。
ハラーは最初、
この価値観に苛立つ。
でも次第に、
彼自身が変わっていく。
ダライ・ラマとの出会い
若きダライ・ラマとの交流が、
ハラーの内面を決定的に変える。
支配者でも、
カリスマでもなく、
ただ知りたがりの少年。
その純粋さと誠実さが、
ハラーの鎧を一枚ずつ剥がしていく。
師弟関係というより、
互いに学び合う関係として描かれるのが印象的。
文明が持ち込む「暴力」
穏やかな時間は、
長くは続かない。
中国軍の侵攻によって、
チベットは大きく変わっていく。
ここで描かれるのは、
戦争の派手さじゃなく、
文化や信仰が壊されていく過程。
静かで、
だからこそ重い。
七年間という時間の意味
タイトルの「七年」は、
単なる滞在期間じゃない。
ハラーが
「他人と世界をどう見るか」を
学び直した時間。
野心に突き動かされていた男が、
他者の痛みを想像できるようになるまでの時間。
それでも、別れは来る
ハラーはチベットを去る。
完全に溶け込めたわけでも、
救われきったわけでもない。
ただ、
出発点とは
明らかに別の人間になっている。
この映画が語ろうとすること
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』は、
ヒマラヤの壮大さを借りた
価値観の転換の物語。
征服することと、
理解することは違う。
強さと、
優しさは別物。
派手ではないけど、
静かに効いてくる映画。
見終わったあと、
「勝つって何だろう」
って、少し考えさせられる。
そんな一本。

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