※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
複製された男
(Enemy)
作品データ
2013年|カナダ|サスペンス/心理ドラマ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ ほか
冴えない男が、自分と同じ顔の他人を見つけてしまう話
歴史の非常勤講師として淡々と暮らしているアダムは、ある日観た映画の端役に、自分とまったく同じ顔の男を見つける。気になって調べるうちに、その男アンソニーが実在していることを知り、連絡を取って直接会うことになる。見た目は同じでも性格も生活も違う二人は、互いの存在に強く引き寄せられ、やがて関係が歪んだ方向へ転がっていく。
気力低め講師アダムと、支配欲強め俳優アンソニー
アダムは自信がなく、恋人との関係もどこかぎこちない。講義でも同じ話を繰り返し、変化を避けて生きている感じ。一方のアンソニーは自己主張が強く、妻との関係でも主導権を握ろうとするタイプ。同じ顔なのに、内側は真逆っぽくて、その対比がやたら不安定さを強めてくる。
くすんだ都市、出口の見えない日常
舞台は具体的な地名がぼかされた大都市。高層ビルや高速道路が何度も映り、どこに行っても同じ景色が続く印象がある。部屋、職場、ホテルと場所は変わっても、空気はずっと重くて閉塞感が抜けない。世界そのものが、二人を閉じ込めている箱みたいに感じられる。
入れ替わりたい衝動が、現実を崩し始める
二人は互いの生活を覗き込み、やがて「相手の立場を一度だけ体験する」方向へ進んでいく。軽い好奇心のつもりが、嫉妬や支配欲、不安が絡まり合って、関係は一気に危うくなる。どこまでが計画で、どこからが衝動なのか、境界が曖昧になっていく。
取り返しのつかないズレが生まれる終盤
入れ替わりによって保たれていた均衡が崩れ、周囲の人間関係にも歪みが広がる。選択の結果が現実として突きつけられ、逃げ場はどんどん狭くなる。終盤では、象徴的な出来事を通して、アダム自身が抱えてきた恐れや葛藤が一気に表に出てくる。
この映画のポイントなに?
そっくりな二人という設定を使いながら、分かりやすい説明はほとんどされない構成。出来事そのものより、繰り返し出てくるイメージや空気感が意味を持っている感じが強い。観ている側に解釈を委ねる余白がかなり大きめ。
たぶんこんな映画
観終わった直後にスッキリするタイプではなく、「あれは何だったんだろう」と後から考え続けてしまう作品。怖さもあるけど、それ以上に落ち着かなさが残る。答えを探すというより、モヤっとした感覚ごと抱えて帰ることになりそう。

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