※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。

タイトル
ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー
(Rebel in the Rye)
作品データ
2017年|アメリカ合衆国|伝記・ドラマ
監督:ダニー・ストロング
出演:ニコラス・ホルト、ゾーイ・ドゥイッチ、ケヴィン・スペイシー ほか
書きたいだけなのに世界が放っておいてくれない男の話
後に名作と呼ばれる小説を書いた青年が、成功すればするほど世間との距離を広げていき、やがて「ひとりで書く」生き方を選ぶまでの話。作家としての誕生と同時に、孤独が始まっていく。
主要人物
・J・D・サリンジャー(ニコラス・ホルト)
作家志望の青年。後に『ライ麦畑でつかまえて』を発表し、時代の象徴的存在になる。
・ウーナ・オニール(ゾーイ・ドゥイッチ)
サリンジャーが恋をする女性。彼の青春期の感情に大きく関わる存在。
・ウィット・バーネット(ケヴィン・スペイシー)
編集者。サリンジャーの才能を見出し、文章と向き合う姿勢に影響を与える。
・ドロシー・オールディング(サラ・ポールソン)
サリンジャーの母。家庭の側から彼を見守る人物。
・ソル・サリンジャー(ヴィクター・ガーバー)
サリンジャーの父。息子の進路や生き方に現実的な視点を持つ。
書くことに取り憑かれた青年時代
物語は、若き日のサリンジャーが「作家になりたい」と強く願うところから始まる。
大学で創作を学び、編集者と出会い、評価されない原稿を書き続ける日々。
うまくいかない現実の中でも、彼はとにかく書くことをやめない。
この頃のサリンジャーは、成功よりも「ちゃんとした文章」を書くことに必死で、世界との距離感はまだ近かった。
戦争と成功がもたらした決定的な変化
第二次世界大戦を経験したサリンジャーは、心に大きな傷を抱えることになる。
その後に発表された『ライ麦畑でつかまえて』は、若者たちから熱狂的に支持され、一気にベストセラーとなる。
しかし名声と同時に、批判や過剰な注目も押し寄せ、彼の内面と世間の間にズレが生まれていく。
書いたものが「作品」ではなく「社会的現象」として扱われ始めたことが、彼を追い詰めていく。
書くために、世界から離れるという選択
称賛されるほど、サリンジャーは人前から姿を消していく。
取材を拒み、私生活を隠し、やがて隠遁生活へ。
この映画は、その選択を「奇行」ではなく、彼なりの必然として描いていく。
書くことを守るために、世界と距離を取る。
その決断が、後のサリンジャー像へと繋がっていく。
この映画のポイント
名作誕生の裏側というより、作家が作家になる過程を丁寧に追っているところ。
成功より前の迷い、失敗、焦りがかなり具体的に描かれる。
「売れた理由」よりも「なぜ書き続けたか」に焦点があるのが特徴。
たぶんこんな映画
静かで、内向きで、派手な展開は少なめ。
でも、書くことに取り憑かれた人の視線や息づかいがずっと続く。
才能と孤独が同時に育っていく感じを、淡々と見せてくる空気の映画。

コメント