インクレディブル・ハルク

※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。




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インクレディブル・ハルク
The Incredible Hulk


作品データ

2008年|アメリカ|アクション・SF
監督:ルイ・レテリエ
出演:エドワード・ノートン、リヴ・タイラー、
ティム・ロス、ウィリアム・ハート ほか


ヒーロー映画なのに、まず「逃亡劇」から始まる

『インクレディブル・ハルク』は、
いわゆる“ヒーロー誕生物語”をほぼ説明しない。

主人公ブルース・バナーは、
すでに事故を起こし、
すでに怪物になり、
すでに追われている。

物語は、
彼がブラジルの片隅で身を潜め、
怒りを抑えながら生きているところから始まる。

この映画のハルクは、
正義の象徴ではない。
制御不能な災害に近い存在だ。


怒り=変身、という残酷な条件

ブルースが抱えている問題は単純だ。

怒ると、壊れる。
心拍数が上がると、終わる。

つまり彼は、
感情を持つこと自体が許されない。

恋も、恐怖も、怒りも、
すべてが「変身の引き金」になる。

この設定が、
ハルクを他のヒーローと決定的に分けている。

力を使うほど強くなるのではなく、
力を出さない努力を続けなければならないヒーロー


追う側は「国家」と「軍」

ブルースを追うのは、
個人的な宿敵ではない。

アメリカ軍、
正確には
「制御できないものを兵器にしたい組織」。

ロス将軍は、
ハルクを“人”として見ない。
研究対象であり、
管理すべき危険物だ。

ここに善悪の単純な対立はない。

  • 危険な存在を放置できない国家
  • 危険だからこそ消えたい個人

どちらも理屈は通っている。
だからこそ話が重い。


アボミネーションという鏡像

物語後半、
ロス将軍の部下ブロンスキーは、
ハルクの力に執着する。

彼は老いを恐れ、
強さを欲し、
自ら怪物になる道を選ぶ。

そして誕生するのが、
アボミネーション。

ハルクと違い、
彼は「怪物になることを望んだ男」

この対比が明確だ。

  • ハルク:なりたくなかった怪物
  • アボミネーション:なりたかった怪物

どちらがより恐ろしいか、
映画は説明しない。
映像で突きつける。


ハルクの戦いは、いつも街を壊す

この映画の戦闘シーンは、
爽快さよりも破壊が前に出る。

建物が壊れ、
車が潰れ、
街が巻き添えになる。

ヒーローが守るべきはずの場所が、
彼の存在によって壊れていく。

ここには、
「街を救うカタルシス」はほとんどない。

残るのは、
力を持つことの後始末だ。


この映画のブルース・バナー像

エドワード・ノートン版のバナーは、
知的で、内省的で、
どこか諦めが混じっている。

彼は勝ちたいわけでも、
英雄になりたいわけでもない。

ただ、
「誰も壊さずに生きたい」。

この控えめな欲望が、
映画全体のトーンを静かに支配している。


MCUの中で異質な立ち位置

『インクレディブル・ハルク』は、
MCU初期作品でありながら、
テンションがかなり異なる。

軽口も少なく、
ヒーロー同士の連帯もない。

あるのは、
孤立、逃亡、拒絶。

だからこそこの作品は、
MCUの中で
いちばん孤独なヒーロー映画とも言える。


怪物映画としてのハルク

この映画は、
スーパーヒーロー映画というより、
クラシックな怪物映画に近い。

怪物は倒されるべき存在か。
それとも、
理解されるべき存在か。

『インクレディブル・ハルク』は、
その答えを出さない。

ただ、
怒りを抑えながら生きる男の背中を、
最後まで追い続ける。


ハルクは勝ったのか?

物語は一応、
戦いの勝利で終わる。

だが、
問題は何一つ解決していない。

怒りは消えていない。
力も消えていない。
追われる運命も続く。

それでも、
ブルースは少しだけ前を向く。

インクレディブル・ハルクは、
「力を持つこと」ではなく、
「力と一緒に生きること」を描いた映画。

ヒーローが吠える映画ではなく、
ヒーローが歯を食いしばる映画。

それが、この作品の一番の特徴だ。

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