※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
バビロン
(Babylon)
作品データ
2022年|アメリカ|ドラマ/群像劇
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、
ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート ほか
ハリウッドの始まりは、地獄みたいだった
『バビロン』が描くのは、
1920年代のハリウッド。
映画が
サイレントからトーキーへ
切り替わる、
歴史の大転換期。
でもこの映画、
「映画の誕生を美しく描こう」
なんて気は一切ない。
最初から最後まで、
下品・混沌・欲望まみれ。
ハリウッドは夢工場じゃなく、
欲望処理場として描かれる。
冒頭30分で、もう限界
映画の冒頭、
いきなり狂乱のパーティ。
酒、ドラッグ、セックス、
動物、排泄、暴力。
正直、
「これ3時間も続くの?」
と思う人は多い。
でもこれは
チャゼルの宣言。
「この世界、最初から壊れてますよ」
スターは生まれ、簡単に捨てられる
物語の中心にいるのは、
・時代のスター俳優
ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)
・成り上がり女優
ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)
・裏方から這い上がる青年
マニー(ディエゴ・カルバ)
彼らは、
才能も情熱もある。
でも映画業界は、
彼らを守らない。
流行が変われば、
あっさり置いていかれる。
トーキー化=地獄の始まり
サイレント時代は、
多少いい加減でも成立していた。
声が入ることで、
一気に「正確さ」が求められる。
・雑音は許されない
・演技は誇張できない
・人格や素行まで問われる
ここで多くの人が、
脱落していく。
特にネリーは、
才能があるのに
「声」「態度」「育ち」で
切り捨てられる。
ブラッド・ピットが演じる“終わるスター”
ジャックは、
誰よりも映画を愛し、
誰よりも観客に愛された男。
でも彼自身が、
自分の時代が終わったことを
理解している。
拍手は減り、
役は小さくなり、
若い才能が次々現れる。
この静かな絶望が、
映画の中盤以降、
重くのしかかる。
地獄の後半、地下へ潜る
後半、
物語は文字通り
地下世界へ降りていく。
違法、暴力、
命の軽さ。
ここは
ハリウッドの裏側であり、
映画産業が
「見ないことにした場所」
このシークエンスは、
やりすぎで、悪趣味で、
それでも目が離せない。
ラストは、愛と呪いの告白
ラスト、
映画史のモンタージュが流れる。
サイレントから現代まで、
映画が積み重ねてきた時間。
これは
チャゼルから映画への
ラブレターであり、
同時に呪詛。
「こんな世界だけど、
それでも映画を愛してしまう」
という、
矛盾した感情の爆発。
これは“映画に人生を吸われた人たち”の物語
『バビロン』は、
楽しい映画じゃない。
むしろ、
観ていて疲れるし、
気分も良くない。
でもテーマは、
はっきりしている。
・映画は人を救う
・同時に、人を壊す
それでも、
誰かが命を燃やしたから、
映画はここまで続いてきた。
この映画自体が、
その矛盾の塊。
映画を好きでいればいるほど、
複雑な気持ちになる一本。

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