※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
スパイ・ゲーム
(Spy Game)
作品データ
2001年|アメリカ|スパイ/サスペンス
監督:トニー・スコット
出演:ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット、キャサリン・マコーマック ほか
冒頭から「時間がない」映画
『スパイ・ゲーム』は、
最初から締め切り付きで始まる。
CIAベテラン工作員ネイサン・ミュアーは、
今日が引退の日。
ところがその朝、
かつての部下トム・ビショップが
中国で捕まり、
24時間以内に処刑される
という情報が入る。
ここから映画は、
「定年最終日に、どこまでやるか」
という話になる。
現在と過去が同時に進む構成
物語は二重構造。
・現在:
CIA本部で尋問を受けるミュアー
・過去:
若き日のビショップとの任務の回想
この切り替えが非常にテンポ良く、
スパイ映画なのに
アクションより会話が主役。
何が起きたかより、
なぜそうしたか
が積み重なっていく。
師匠と弟子、というより「育てた側の責任」
ロバート・レッドフォード演じるミュアーは、
皮肉屋で計算高く、
感情を表に出さない。
一方、
ブラッド・ピット演じるビショップは、
有能だけど理想主義。
命令よりも、
目の前の人を助けてしまうタイプ。
ミュアーは
そんな彼を育てた。
つまりこの映画、
「若者が失敗する話」じゃなく、
育てた側が、その後始末をする話。
ビショップが踏み越えた一線
ビショップは
任務中に出会った女性エリザベスを愛し、
彼女を守るために
命令違反を重ねる。
スパイとしては致命的。
でも人間としては、
かなりまっとう。
彼は
「正しいことをした」
という確信を持っている。
問題は、
スパイの世界では
正しさは免罪符にならないこと。
スパイの世界は、情を嫌う
CIAは、
ビショップを見捨てようとする。
国益にならない。
外交問題になる。
コスパが悪い。
誰も
「助けたい」とは言わない。
ここでこの映画は、
スパイ映画あるあるの
ヒーロー主義をやらない。
組織は冷たい。
それが普通。
ミュアーの静かな反撃
ミュアーは、
正面から逆らわない。
怒鳴らない。
説得もしない。
ただ
組織のルールを完璧に利用する。
帳簿、承認フロー、
予算、責任分散。
全部を使って、
知らないうちに
救出作戦を成立させる。
これは肉体戦じゃなく、
知恵と経験の戦い。
若さと老いの対比
ビショップは、
理想のために自分を燃やす。
ミュアーは、
理想のために
システムを騙す。
どちらが正しいかじゃない。
若い頃は
「正義」で突っ走り、
年を取ると
「責任」を引き受ける。
この対比が、
映画全体を静かに支えている。
派手じゃないけど、気持ちいいラスト
クライマックスは、
大爆発も肉弾戦もない。
あるのは、
「もう手は打ってある」
という静かな種明かし。
そしてミュアーは、
何事もなかったかのように
引退していく。
ヒーローは称賛されない。
記録にも残らない。
それが
スパイという仕事。
この映画が一番言いたいこと
『スパイ・ゲーム』は、
スパイ映画だけど、
実は 仕事映画。
・部下をどう育てるか
・組織と個人のズレ
・引き際の美学
そういう話が、
ずっと流れている。
残る余韻
見終わったあと、
派手なシーンは
あまり思い出せない。
でも、
「いい上司って何だろう」
という問いは残る。
若さを消費させて、
責任を取らない大人にはならないか。
それを
引退の日に全部引き受ける男の話。
地味だけど、
大人になるほど刺さる。
そんなスパイ映画。

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