※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
オッペンハイマー
(Oppenheimer)
作品データ
2023年|アメリカ合衆国|ドラマ
監督:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr. ほか
天才が世界を変えてしまったあとに一人で立ち尽くす話
原子爆弾開発を率いた理論物理学者オッペンハイマーが、栄光の頂点に立った瞬間から、その選択の重さに押し潰されていくまでを描く話。科学、戦争、政治、良心が絡み合い、成功がそのまま破滅の入口になっていく。
物語の主要人物
・J・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)
理論物理学者。マンハッタン計画の責任者。
・キャサリン・“キティ”・オッペンハイマー(エミリー・ブラント)
オッペンハイマーの妻。揺れる夫を支える存在。
・レズリー・グローヴス(マット・デイモン)
陸軍の将校。原爆開発計画を指揮する軍側の責任者。
・ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)
原子力委員会の委員長。後にオッペンハイマーと対立する。
聴聞会から始まる過去の再生
物語は1950年代、オッペンハイマーがスパイ容疑をかけられ、原子力委員会の聴聞会にかけられる場面から始まる。尋問の中で、彼自身の口から若き日の遍歴や思想、科学者としての歩みが語られ、時間は一気に過去へと巻き戻っていく。
天才としての成長と時代のうねり
ハーバード、ケンブリッジ、ゲッティンゲンと渡り歩き、理論物理学の最前線に触れたオッペンハイマーは、アメリカに戻って研究と教育に没頭する。一方で、時代は戦争へと向かい、共産主義思想や政治運動との距離が、後に彼自身を縛る火種になっていく。
マンハッタン計画という賭け
第二次世界大戦の只中、ナチス・ドイツが先に原爆を完成させる恐れが現実味を帯びる中、オッペンハイマーは極秘計画マンハッタン計画の責任者に選ばれる。ニューメキシコ州ロスアラモスに研究所を設立し、世界中から集めた科学者たちを率いて、人類初の核兵器開発に突き進んでいく。
成功の瞬間と拭えない違和感
1945年、トリニティ実験は成功し、原爆は完成する。周囲が達成感に沸く中、オッペンハイマーはその威力を前に言葉を失う。やがて広島への投下、日本の降伏という結果がもたらされ、勝利の裏側で彼の中には強烈な罪悪感が芽生え始める。
戦後に始まる別の闘い
戦争が終わると、オッペンハイマーは英雄として称えられる一方、核兵器の拡大に反対する立場を取るようになる。その姿勢は政治の世界で敵を作り、過去の思想や人間関係が掘り返され、彼は聴聞会という名の場で社会的に追い詰められていく。
この映画のポイント
原爆完成までのサスペンスと、完成後に始まる心理的な崩壊がはっきり分かれて描かれている。爆発そのものよりも、その前後で人が何を考え、何を失ったのかに焦点が当たる構成。時間軸が交錯し、評価と断罪が同時進行していくのも特徴的。
たぶんこんな映画
派手な歴史スペクタクルというより、ずっと頭の中が騒がしい感じ。成功してしまったからこそ終わらない問いを抱え続ける空気が残る。観終わったあと、答えよりも疑問の方が増えている一本。

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