犬ヶ島

※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。




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犬ヶ島
Isle of Dogs


作品データ
2018年|アメリカ|アニメーション・冒険・風刺
監督:ウェス・アンダーソン
出演(声):ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、
リーヴ・シュレイバー、ビル・マーレイ ほか


ゴミの島から始まる、犬たちの物語

舞台は近未来の日本・メガサキ市。
犬インフルエンザの流行を理由に、
市長はすべての犬を隔離政策として
「犬ヶ島」と呼ばれるゴミの島へ追放する。

これは災害対策の話ではない。
映画は最初からはっきり示す。
これは、
排除の物語だ。

理由は病気。
だが実態は恐怖と都合。
「危険かもしれない存在」を
視界から消すための決断。


12歳の少年と、一匹の犬

主人公アタリは、市長の養子。
彼は行方不明になった愛犬スポッツを探すため、
小型飛行機で犬ヶ島へ墜落する。

この少年は、
大きな思想を語らない。
正義も主張しない。

ただ、
犬を探しに来ただけ

このシンプルさが、
映画全体の倫理を支えている。


名前のある犬たち、性格のある声

島でアタリが出会うのは、
かつて飼い主に捨てられた犬たち。

  • リーダー格で現実主義のチーフ
  • 群れを重んじるレックス
  • ゴシップ好きのデューク
  • 陽気なキング
  • 忠実なボス

彼らは人間の言葉を話さない。
だが、
感情と理屈は完全に人間的だ。

犬たちは政治を理解しない。
でも、
裏切りや忠誠の意味は知っている。


チーフという「信じることをやめた犬」

物語の中心にいるのが、
野良犬のチーフ。

彼は人間に飼われた経験がなく、
人間を信用しない。

「人間は、
結局犬を捨てる」

彼のこの態度は、
単なるひねくれではない。
学習の結果だ。

この映画は、
希望を語る前に、
信じられなくなる理由をきちんと描く。


裏で進む「プロパガンダ」と沈黙

一方、人間側では、
犬排除を正当化するための
情報操作が進められている。

  • 偽の科学
  • 操られるメディア
  • 異論を唱える者の排除

ここで描かれるのは、
独裁そのものではない。

善意を装った合理性が、
どれほど簡単に暴力へ転ぶか。

それが、
淡々と、ユーモラスに示される。


ストップモーションが生む「距離感」

本作はストップモーションアニメ。
毛並みの動き、
ゴミの質感、
犬の目の揺れ。

すべてが
「作られている」と分かる。

だがその人工性が、
かえって感情を際立たせる。

これは現実の日本ではない。
でも、
現実のどこかで起きている話だと
観客は理解してしまう。


犬の言葉が翻訳され、人間の言葉は翻訳されない理由

映画では、
犬の会話は英語で分かる。
人間の日本語は、
基本的に字幕がつかない。

この仕掛けは重要だ。

観客は、
犬の側に立つ。
人間社会の議論は、
「よく分からない雑音」として聞こえる。

つまりこの映画は、
最初から立場を選ばせている


最後に示される、小さな回復

物語は、
完全な革命では終わらない。

世界が一気に良くなることもない。
失われたものが、
全部戻るわけでもない。

それでも、
犬と人間の関係は
少しだけ修復される。

それは制度ではなく、
関係の回復だ。


ウェス・アンダーソン作品としての異色さ

『犬ヶ島』は、
可愛らしい見た目とは裏腹に、
かなり政治的で、冷静な作品。

皮肉も、
毒も、
しっかり効いている。

それでも最終的に残るのは、
怒りよりも、
忠誠と友情だ。


この映画が語る、いちばんシンプルなこと

『犬ヶ島』が問いかけるのは、
難しい思想ではない。

  • 捨てていい存在なんてあるのか
  • 声を持たない側の話を、誰が聞くのか

犬たちは英雄じゃない。
ただ、
一緒に生きようとしているだけだ。

だからこの映画は、
優しくて、
そしてとても痛い。

観終わったあと、
道端の犬を見る目が、
ほんの少し変わる。

それが、
この映画のいちばん静かな効果だ。

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