※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
ブラッド・シンプル
(Blood Simple.)
作品データ
1984年|アメリカ|ネオノワール・犯罪
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:ジョン・ゲッツ, フランシス・マクドーマンド, ダン・ヘダヤ, M・エメット・ウォルシュ, サムアート・ウィリアムズ ほか
不倫がバレた夜、全員が勘違いしながら最悪の一手を積み続ける話
テキサスのバーで働くレイは、上司マーティの妻アビーと不倫中。探偵ヴィッサーに写真を撮られて関係が露見し、マーティは二人を消すためにヴィッサーへ依頼する。ところがヴィッサーは裏でマーティを撃ち、写真も改ざん。さらにレイは状況を誤解して「片付け」に走り、アビーもまた何が起きてるのか見えないまま恐怖だけが増えていく。最後はアパートの暗闇で、命がけのかくれんぼみたいな決着になる。
ざっくり時系列
レイとアビーが土砂降りの夜に密会する
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探偵ヴィッサーが情事の写真を撮ってマーティに渡す
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マーティがヴィッサーにレイとアビーの殺害を依頼する
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ヴィッサーが写真を改ざんし「殺した証拠」を見せる
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ヴィッサーがマーティを撃ち、金を奪って去る(ライター忘れる)
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レイがマーティの遺体を見つけ、アビーが撃ったと思い込んで処理を始める
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マーティがまだ生きていて、レイが生き埋めにしてしまう
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改ざん写真の存在が見えてきて、全員の思い込みが噛み合わなくなる
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ヴィッサーがレイを狙撃し、アビーのアパートへ侵入する
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暗闇のアパートでアビーとヴィッサーが対決し、アビーが撃ち勝つ
物語の主要人物
・レイ(ジョン・ゲッツ)
テキサスのバーテンダーで、上司の妻と関係を持っている
・アビー(フランシス・マクドーマンド)
マーティの妻で、レイと密会している
・ジュリアン・マーティ(ダン・ヘダヤ)
バーの経営者で、探偵を雇って状況を動かす
・ローレン・ヴィッサー(M・エメット・ウォルシュ)
私立探偵として雇われるが、裏で別の狙いも動かす
・モーリス(サムアート・ウィリアムズ)
同じバーで働くバーテンダーで、伝言が火種になる
土砂降りのドライブから、もう戻れない感じで始まる
最初は、レイとアビーが雨の夜に車で走りながら、アビーと夫マーティの破綻した結婚生活の話をするところから。雰囲気としては静かなんだけど、会話の中身はすでに危うい。二人はモーテルへ行き、関係を決定的にしてしまう。
ここで出てくるのが私立探偵ヴィッサー。彼は二人の情事を写真に撮ってマーティに渡す。つまり「やばい証拠」が最短距離で届く。マーティは怒りつつも、変に冷静で、レイにわざと揺さぶりをかけるような言葉も投げる。もうこの時点で、人間関係がピリピリに乾いてるのに、外は土砂降りっていうギャップがいい具合に不穏。
依頼したはずの探偵が、いちばん危険なプレイヤーになる
マーティはついにヴィッサーへ「二人を殺してくれ」と金を出す。普通なら、ここでマーティがラスボスになりそうじゃん? でもこの映画、そうならないのが怖いところ。
ヴィッサーはまずレイの家に侵入して、アビーの銃を盗む。さらに写真をいじって、二人が撃たれたように見える“証拠”を作り、マーティに見せる。マーティが金を渡そうとした瞬間、ヴィッサーはその銃でマーティを撃って金を奪う。
つまり、雇い主の計画を乗っ取って、全部自分の都合に作り替える。しかも完璧そうに見えるのに、ライターを忘れるっていう、ちょっとした抜けが後で効いてくるのがまた嫌らしい。
片付けたつもりが地獄の追い焚き、暗闇のアパートで最終戦
レイはマーティの遺体を発見して、状況を誤解する。アビーが撃ったと思い込み、現場を清掃し、遺体を車に詰めて埋めに行く。でもマーティはかろうじて生きていて、浅い墓の中で必死に抵抗する。レイはそれでも止まれず、生き埋めにしてしまう。
翌朝、レイは「全部片付けた」と言うけど、アビーは何の話か分からないまま口論になっていく。さらに、ヴィッサーからの無言電話や、バー仲間モーリスの伝言が混ざって、アビーは「全部マーティの仕業だ」と思い込む。思い込みが次の行動を呼んで、その行動がまた別の誤解を生む。
やがてレイは金庫から改ざん写真を見つけ、真相に近づく。でもその直後、ヴィッサーに屋上からライフルで撃たれてしまう。アビーは部屋の電球を割って暗闇を作り、バスルームに籠城。ヴィッサーはライターを探して侵入し、部屋は静かな音と息づかいだけの空間になる。
窓、壁、ナイフ、銃。距離が近いのに見えない、見えないのに気配だけは濃い。最後は浴室のドア越しに、アビーが撃ち抜いて決着する。
この映画のポイント
・大事件より「小さな誤解」が連鎖して大きくなっていく流れ
・探偵ヴィッサーが“雇われ役”の枠を軽々と超えてくる怖さ
・暗闇、雨、狭い部屋、音の使い方で緊張が積み上がる
・登場人物それぞれが、知ってる情報の範囲で必死に動いてズレていく感じ
たぶんこんな映画
雨の夜のじめっとした空気から始まって、だんだん「これ、誰も全体像つかめてなくない?」って状態に沈んでいく感じ。派手に説明してくれないのに、状況はどんどん切迫して、最後は暗闇の中で呼吸が浅くなるタイプの締め方になる。観てる側は、登場人物の一手一手に「そっち行くのか…!」って気持ちが積み重なって、終わった後もしばらく頭の中が静かにザワつく余韻が残るやつ。

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