※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い
(Legends of the Fall)
作品データ
1994年|アメリカ(モンタナ州ほか)|ドラマ/ロマンス
監督:エドワード・ズウィック
出演:ブラッド・ピット、アンソニー・ホプキンス、
エイダン・クイン、ジュリア・オーモンド ほか
大きな自然と、語られる「一族の物語」
この映画は、
一人の男の人生というより、
ある一家に流れた長い時間の伝説を描いた作品。
語りは回想形式で進み、
舞台は20世紀初頭のアメリカ、モンタナの大自然。
荒々しい山、草原、川。
人間の感情なんて関係なく、
ずっとそこにある景色の中で、
人は愛し、傷つき、壊れていく。
最初から最後まで、
どこか「神話」っぽい空気が漂っている。
ラドロー大佐と三人の息子たち
一家の中心にいるのは、
アンソニー・ホプキンス演じるラドロー大佐。
軍人としての人生に絶望し、
文明から距離を置いて生きる男。
彼には三人の息子がいる。
長男アルフレッド:
理性的で現実主義、父とは価値観が合わない。
次男トリスタン:
自由で野性的、本能で生きる男。
三男サミュエル:
純粋で理想主義、まだ世間を知らない存在。
この三兄弟の違いが、
のちにすべての悲劇を呼び込む。
一人の女性がもたらす運命の歪み
サミュエルが連れてきた婚約者、スザンナ。
知的で気品があり、
どこか孤独を抱えた女性。
彼女は最初、
間違いなくサミュエルの恋人として描かれる。
でも、
トリスタンとの間に生まれる
言葉にできない引力が、
物語の空気を変えていく。
この時点で、
すでに不穏。
戦争が奪うもの、壊すもの
第一次世界大戦が始まり、
三兄弟は戦場へ向かう。
ここで起きる
サミュエルの死。
しかも、
トリスタンの目の前で。
この出来事が、
トリスタンの人生を決定的に変える。
彼は自責と喪失感を抱え、
「普通の人生」から
完全に外れてしまう。
トリスタンという男の危うさ
ブラッド・ピット演じるトリスタンは、
この映画の象徴みたいな存在。
自由で、強くて、魅力的。
でも同時に、
破滅に向かって一直線な男。
彼は愛されるけど、
自分を大切にしない。
スザンナは彼を愛し、
待ち続けるけど、
トリスタンは戻らない。
彼の自由は、
誰かと共に生きる自由じゃない。
残される者たちの人生
トリスタンが去ったあと、
スザンナはアルフレッドと結婚する。
これは裏切りというより、
「生き延びるための選択」。
父ラドローは老い、
一家は少しずつ崩れていく。
それぞれが
トリスタンの不在を中心に、
歪んだ形で人生を進めていく。
取り返しのつかない時間
やがてトリスタンは戻ってくる。
でも、
時間は戻らない。
スザンナは、
彼を愛したまま、
絶望の中で命を絶つ。
ここがこの映画の
一番苦い部分。
誰も完全には悪くない。
でも誰も、
正しくは生きられなかった。
老いと伝説としての終わり
最後、
年老いたトリスタンは
自然の中で生き続けている。
彼は孤独だけど、
自然とともにある。
この結末は、
救いとも、罰とも取れる。
ラドロー大佐が語るように、
これは「伝説」。
善悪や正解ではなく、
ただ
そういう人生があった、
という物語。
この映画が残すもの
『レジェンド・オブ・フォール』は、
激しい恋愛映画でも、
家族ドラマでもある。
でも根っこにあるのは、
情熱は人を生かしもするし、壊しもする
という感覚。
美しい自然と、
どうしようもない人間の感情。
その対比が、
いつまでも胸に残る。
見終わったあと、
「誰が幸せだったのか」は
よく分からない。
でも、
「強く生きた人間たちの記憶」だけは、
確かに残る映画。

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