※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
(Guillermo del Toro’s Pinocchio)
作品データ
2022年|アメリカ|ストップモーション・ファンタジー
監督:ギレルモ・デル・トロ、マーク・グスタフソン
出演(声):ユアン・マクレガー、デヴィッド・ブラッドリー、グレゴリー・マン、ケイト・ブランシェット、クリストフ・ヴァルツ ほか
木の人形が「いい子」とは何かを問い続ける話
戦争で息子を失った木彫り職人ゼペットは、深い悲しみの中で一本の木から人形を彫り上げる。その夜、不思議な力によって人形ピノッキオは命を得る。無邪気で制御不能な彼は、父の期待や社会のルールを理解しきれないまま、外の世界へと転がり出ていく。時代は不穏な空気に包まれたイタリア。ピノッキオの存在は、家族、権力、教育、従順さといった価値観に揺さぶりをかけていく。
ピノッキオ、素直すぎて危うい存在
ピノッキオは嘘をつくというより、思ったことをそのまま口にしてしまうタイプ。善悪の基準も、空気を読む力もまだ育っていない。だからこそ、周囲の大人たちの言葉や期待を、全部同じ重さで受け取ってしまう。その無垢さが、時に人を困らせ、時に核心を突く。
父ゼペットと、失われた時間
ゼペットは息子を失った喪失感から抜け出せず、ピノッキオにその面影を重ねている。愛情は確かにあるが、どう接すればいいのか分からない。ピノッキオが「自分の思う子」にならないことに戸惑いながらも、少しずつ父親として向き合おうとする姿が描かれていく。
舞台は、従うことが美徳とされる時代
物語の背景には、権力と規律が強調される社会がある。学校、軍事訓練、娯楽の場ですら、「正しくあること」が求められる。そんな世界で、言うことを聞かない木の子どもは、都合の悪い存在として扱われていく。ピノッキオは知らないうちに、大人の事情に巻き込まれていく。
甘い誘いと、利用される純粋さ
ピノッキオの特異な存在は、大人たちの欲や野心を引き寄せる。舞台に立たされ、称賛され、管理されそうになる一方で、その裏には搾取や支配の匂いが漂う。本人は楽しいつもりでも、選択肢は実はかなり狭い状態が続く。
死と時間に触れる終盤
物語が進むにつれて、ピノッキオは「死なない存在」としての自分を意識し始める。周囲の人々は老い、変わり、失われていく。その中で、命の重さや、限りがあることの意味が浮かび上がってくる。何を選び、誰のために行動するのかが、はっきり問われる流れになる。
この映画のポイントっぽいところ
童話として知られる物語を、かなり現実的で重たいテーマと結びつけている点が特徴。美しいストップモーションの質感と、シビアな世界観の組み合わせが独特。子ども向けというより、成長や親子関係を考える大人に強く引っかかる作りになっている。
たぶんこんな映画
教訓を押しつけるというより、「いい子って何だろう」と問いを投げ続ける一本。優しさと残酷さが同時に存在していて、簡単に割り切れない余韻が残る。観終わったあと、ピノッキオの行動を何度も思い返したくなるタイプっぽい。

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