※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
真夜中のピアニスト
(De battre mon cœur s’est arrêté)
作品データ
2005年|フランス|ヒューマンドラマ
監督:ジャック・オーディアール
出演:ロマン・デュリス、ニールス・アレストリュプ、エマニュエル・ドゥヴォス ほか
不動産ゴリゴリ男が、急にショパンに人生を揺さぶられる話
パリで不動産のゴタゴタを処理して回っている男トマは、荒っぽい仕事と父親の影響の中で生きている。そんな彼が、昔に諦めたピアノへの未練を思い出し、ピアニストを目指す道に足を踏み入れていく。練習に没頭する一方で、仕事の世界は相変わらず危うく、暴力や裏の論理がつきまとう。音楽に近づくほど、これまでの生き方とのズレが大きくなり、どちらを選ぶのかを迫られていく流れ。
殴る世界と弾く世界の間で揺れるトマ
主人公トマは、短気で行動が早く、言葉より先に体が動くタイプっぽい。父親の下で不動産絡みの揉め事を片付ける日々を送っていて、グレーどころかかなり黒に近い場面にも顔を出す。一方で、心の奥には母の影響で身につけたピアノへの強い記憶が残っていて、音楽に触れると急に別人みたいになる感じがある。荒さと繊細さが同居していて、そのバランスがずっと不安定。
現代パリ、裏社会寄りの不動産業界あたり
舞台は2000年代のパリ。表向きは普通の街だけど、トマが関わるのは立ち退き交渉や脅しが当たり前に飛び交う世界。そこに、移民の女性ピアニストから個人レッスンを受ける時間が差し込まれてくる。昼と夜、仕事場と練習部屋、使う言語まで違っていて、生活が二重構造みたいになっていく。
ピアノ練習とトラブル処理が同時進行する日々
トマは本気でオーディションを目指し、指が血だらけになりそうな勢いで練習を重ねる。ただ、仕事の方では父親の依頼や古い因縁が次々に舞い込み、暴力的な解決を求められる場面も増えていく。音楽に集中したいほど、現実が邪魔をしてくる感じで、練習中に仕事の電話が鳴るたびに空気が一気に壊れる。
音楽を選ぶのか、過去の延長を生きるのか
やがてトマは、これまでのやり方ではピアノも人生も成り立たないところまで追い込まれていく。父との関係、仕事仲間との距離、そして自分自身の衝動。全部を同時に抱えきれなくなり、どこかで線を引く必要が出てくる。終盤では、彼なりの選択が形になって現れ、静かな場所でその結果が示される。
この映画のポイントなに?
音楽映画というより、人生の方向転換に伴う違和感を延々と見せられる感じ。ピアノが上手くなる話というより、上手くなろうとする過程で、これまでの生き方がどれだけ合っていなかったかが浮き彫りになる。演奏シーンと暴力的な場面の切り替えが多くて、その落差がずっと続くのも特徴っぽい。
たぶんこんな映画
夜中に一人で観ると、テンションが少し内側に寄っていくタイプの作品。派手な成功やスカッとした達成感より、選び直すことのしんどさや、うまく言葉にできない焦りが残る。観終わったあと、ピアノの音だけがしばらく頭に残る、そんな余韻が続くかもしれない。

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