※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
ファーストフード・ネイション
(Fast Food Nation)
作品データ
2006年|アメリカ・イギリス|ドラマ
監督:リチャード・リンクレイター
出演:グレッグ・キニア、イーサン・ホーク、パトリシア・アークエット ほか
ハンバーガーの中身を追ったら社会の奥まで見えてしまう話
大手ハンバーガーチェーンのパテに問題があるらしい。調査に動いたマーケ担当の男を軸に、工場、店舗、移民労働、環境まで話が連なっていく。ひとつのハンバーガーを辿るだけなのに、気づくと社会の裏側をぐるっと一周している、そんな構造の映画。
登場人物
・ドン
ハンバーガーチェーン「ミッキーズ」のマーケティング担当。パテに大量の大腸菌が含まれているという報告を受け、現場調査に向かう。
・ビート
理想を語る活動家。食や社会のあり方について強い問題意識を持つ。
・シンディ
ミッキーズで働く女性。現場の空気や労働の現実を体現する存在。
・シルヴィア
移民として食肉工場で働く女性。過酷な労働環境の中心にいる。
・ハリー・リデル
企業側の論理を象徴する人物。問題をどう扱うかの姿勢が印象的。
企業の調査から物語が動き出す
物語はごくビジネス的な呼び出しから始まる。大学の分析で、パテに大腸菌が含まれている可能性があると知らされたドンは、会社のために原因を探ることになる。最初は品質管理の話だったはずが、調べるほどに範囲は広がっていく。
工場と店舗、そして働く人たち
調査の視点は工場へ、そして店舗へと移る。衛生管理、効率優先の仕組み、現場で働く人たちの意識と疲労。
同時進行で描かれるのが、移民労働者たちの現実だ。仕事を得るために危険な工程を引き受け、声を上げにくい立場に置かれている様子が、淡々と積み重なっていく。
問題がつながり、逃げ場がなくなる
一つ一つは別の話に見えていた要素が、いつの間にか一本の線になる。工場の衛生、安さを支える仕組み、消費者の選択、企業の判断。
誰か一人の悪意というより、システム全体がそう動いている感じが強まり、ドン自身も簡単には答えを出せない場所に追い込まれていく。
この映画のポイント
・ドキュメンタリー原作をドラマとして再構成している
・一人の主人公に寄り切らず、視点が次々に移動する
・日常的な食べ物から社会構造が見えてくる
・説明しすぎず、出来事を並べて考えさせる作り
たぶんこんな映画
ハンバーガーを題材にしているけど、味や見た目の話はほとんど出てこない。
その代わり、作る側、売る側、働く側、管理する側が同時に映り、どこにも単純な着地点が用意されていない。
観ているうちに、普段あまり考えない流れを、自然と頭の中でたどらされる、そんな手触りの映画。

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