※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未視聴の方はご注意ください。
インフォーマント!
(The Informant!)
作品データ
2009年|アメリカ|伝記・ブラックコメディ
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:マット・デイモン, スコット・バクラ, ジョエル・マクヘイル, メラニー・リンスキー ほか
会社を告発した男が、実は会社のお金も盗んでいた話
巨大企業ADMで出世街道を走っていたマーク・ウィテカーは、会社ぐるみの価格カルテルをFBIに告発する。数年にわたって世界中の密談を録音し、捜査を裏で支える彼は一見すると正義の内部告発者。でも物語が進むにつれ、彼自身が会社から巨額の金を横領していた事実が明らかになっていく。善行と不正、ヒーローと犯罪者、その境界がぐにゃっと歪んでいく実話ベースの話。
ざっくり時系列
ADMの幹部として働く
↓
妻の勧めで会社のカルテルを告発する
↓
FBIと接触し盗聴に協力する
↓
世界各地の会議を秘密録音する
↓
ADMへの家宅捜索が行われる
↓
内部告発者として注目される
↓
実は横領していたことが発覚する
↓
FBIとの関係が崩れる
↓
逮捕され重い刑を受ける
↓
刑務所から釈放される
物語の主要人物
・マーク・ウィテカー(マット・デイモン)
ADMの幹部でFBIの情報提供者
・ブライアン・シェパード(スコット・バクラ)
FBI特別捜査官でウィテカーの担当
・ロバート・ハーンドン(ジョエル・マクヘイル)
FBI特別捜査官
・ジンジャー・ウィテカー(メラニー・リンスキー)
マークの妻
出世企業の裏側で始まる秘密の告白
舞台は1990年代初頭、イリノイ州ディケーター。巨大穀物企業ADMで将来を嘱望されていたマーク・ウィテカーは、ある夜FBIに接触し、会社がリジン価格を不正に操作していると告白する。ここから彼は盗聴器を身につけ、会社の幹部や競合企業との会合を密かに録音する役割を担うことになる。
世界を飛び回る録音と、膨らんでいく違和感
東京、パリ、メキシコシティ、香港。ビジネス会議の裏で録音を続けるウィテカーは、FBI捜査の要となっていく。一方で彼の語りはどこか噛み合わず、些細な記事に過剰反応したり、妙に自信満々だったりと、不安定さも目立ち始める。彼の行動は、正義感なのか、自己演出なのか、だんだん判別しにくくなっていく。
告発者の正体がひっくり返る瞬間
捜査が終盤に差しかかった頃、衝撃の事実が明らかになる。ウィテカーはFBIに協力している最中、会社から約900万ドルを横領していた。しかも将来的にADMのCEOになるつもりだったという話まで飛び出す。FBIとの信頼関係は崩壊し、彼は事件から完全に切り離され、最終的に重い刑を言い渡される。
この映画のポイント
・実話なのに信頼できない語り手
・軽快な音楽と深刻な出来事のズレ
・内部告発と自己正当化が混ざり合う構造
・マット・デイモンの淡々とした異様さ
たぶんこんな映画
真面目な企業犯罪映画かと思って観ると、途中から不思議なコメディのリズムに引きずり込まれる。笑っていいのか戸惑いながら、気づけば人間の自己認識の怪しさを見せられている感じ。スーツ姿で世界を飛び回る男の頭の中が、少しずつズレていくのを眺める映画。

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