私が、生きる肌

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私が、生きる肌
(原題:La piel que habito/英題:The Skin I Live In)

作品データ
2011年|スペイン|サスペンス/ドラマ
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス ほか

天才外科医が「完璧な肌」を作ろうとして、取り返しのつかないところまで行く話

事故と喪失をきっかけに、ある外科医が人の皮膚に異常な執着を持つようになって、その執念が一人の人間の人生そのものを作り替えてしまう始まり。

科学と復讐と執着が絡み合っていく

形成外科医のロベルは、火傷に耐性を持つ人工皮膚の研究を続けている。彼の屋敷にはヴェラという女性が監禁されるように暮らしていて、ロベルは彼女に対して特別な関心を向けている。話が進むにつれて、ロベルの過去、妻の事故、娘に起きた出来事が少しずつ明らかになり、ヴェラがなぜそこにいるのか、その理由も徐々に見えてくる。

感情を切り離して生きている外科医

ロベルは冷静で理知的。感情を表に出さず、研究と手術にすべてを注いでいるように見える。ただその落ち着きの裏には、取り返しのつかない後悔と怒りが積み重なっていて、それを科学で制御しようとしている感じ。

閉じ込められた女性の静かな抵抗

ヴェラは屋敷の一室で管理された生活を送っている。逃げようとするでもなく、暴れるわけでもなく、淡々と日々を過ごしているけど、その内側では強い意思を失っていない様子が見えてくる。

過去の出来事が少しずつ形を変えて現れる

物語は現在と過去を行き来しながら進む。ロベルの家族に起きた悲劇、娘ノルマの心の崩れ、そしてある若者ビセンテの存在が、点として提示されていく。

身体とアイデンティティが結び直される過程

やがて、ヴェラの正体が明かされる。彼女は最初から「彼女」だったわけではなく、ロベルの復讐と研究の対象として、身体も性別も作り替えられていた存在だったことが分かる。ここで、これまでの出来事が一気につながっていく。

科学が正義を越えてしまった先

ロベルは自分の行為を正当化しているつもりでいるけど、それがどれほど相手の人生を奪っているかには向き合えていない。ヴェラは従順に見せかけながら、心の奥で生き延びる道を探している。

立場が逆転するクライマックス

物語の終盤で、ヴェラはついに自分の意志を行動に移す。長く続いた支配関係が崩れ、ロベルが信じていた秩序も一気に揺らぐ。ここで、この話が単なる監禁劇ではなかったことがはっきりする。

生きるために「自分」を取り戻す話

この映画のポイントは、身体と心、外見と中身がどこまで一致しているのかという問い。変えられたのは肌だけなのか、それとも人生そのものなのか、ずっと考えさせられる構造になっている。

美しくて不穏な余韻が残る一本

映像は静かで整っているのに、内容はかなり重い。すべてが説明しきられるわけではなく、観終わった後に「これは何だったんだろう」と感覚が残り続ける、そんな終わり方の映画。

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